CHAT! CHAT! CHAT! #01「外へ/Into The Slum」

登場人物

ワニウエイブ:ミュージシャン/フリーライター
https://twitter.com/waniwave

高島鈴:フリーライター
https://twitter.com/mjqag


あらすじ

わけあってnoteは使わないことになり、ALTSLUMを設立する直接のきっかけになりました。詳しくはABOUTを参照してください。


2020/11/06収録

ワニウエイブ
ということで、とうとう始まっちゃいましたね……なんとなくの構想から結構時間がたってしまいましたが……。

高島
始まりましたね。なんかどう話を進めていいかもよくわかってないのですが、最初は趣旨説明とかがいいんでしょうか?

ワニウエイブ
そうですね……! 趣旨説明と、設立(設立っていう表現があんまりピンときてないんですが)した経緯をざっくり説明できたらなと思ってます!

高島
出発点として、私もワニウエイブさんもアナキストのフリーライターですね! ismで連帯するのはそれなりに問題があるので私はアナキズムという言い方を極力避けておりますが……お互いそれなりに問題意識が通じる部分もあったのかなと勝手に思っています。

ワニウエイブ
今となっては、僕がどうやって高島さんのこと知ったのかを覚えてないんですけど、どっかのタイミングで「ワ、やってる人いるな!いいな!」と感じたんですよね。ちゃんとismのことを話してるひとってのがSNSにはあんまりいないなっていうのが印象としてずっとあったので。

高島
まあ言いづらい空気はすでにありますからね、じゅうぶんに……。

ワニウエイブ
ぼくは一応音楽活動なんかもしてたんですが、インターネットの音楽もノンポリティカルであることがコードでしたから。なんで、いつか機会を設けて喋ってみたいとは個人的に勝手に思っておりました……!

高島
それは同感です。やっぱりフリーライターという立場とアナキストという立場は、ある意味ものすごく親和性が高いのですが(歴史的にもアナキストと印刷工は深い関係にありますね)、一方で現在の状況においては、「仕事を実際どう得るか」という点でネオリベと衝突してしまうような、難しいものを抱えていますよね。

ワニウエイブ
自分が仕事してるのとか今でもあんまり信じらんないですからね……。

高島
まずライターが仕事を取るには認知されないといけないので、なんかメアドやプロフィールをのっけて、SNSをやると。しかしそういうでかい企業(facebookとかTwitterとか)のために無償でコンテンツを増やしてやるような真似をしないといけないのはかなりムカつくことなので、ワニウエイブさんもわざと変なプロフにしたりとか、いろいろされてたかなと思うのですが……。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: EeBo0E_U4BMMGJz.png

ワニウエイブ
はずい。

高島
そういう、ある意味ネオリベに適合的な方法から逃げたくなって変なこと(プロフいじるとか)するわけですけど、そうなると仕事はやっぱりこないという。私もそもそも全然稼げてないんですが、定期的にこのプロフ爆破したくなりますもん。

ワニウエイブ
Twitterのプロフィール文に真面目に肩書を書くことのイヤさっていうのを真剣に言語化しようと試みたことなかったです。完全に肌感覚というか、「ぼくのインターネットはそうだから」でしかなかったな。

高島
「ぼくのインターネット」であって「ぼくらのインターネット」でないところがここは肝ですよね?

ワニウエイブ
あーーーえーーーどうなんだろう、凶悪な質問ですね……!
ぼくも昔は「我々」とか「俺たち」みたいな感じだったんだけど、いまはあんまりポジティブな意味では使わなくなりましたね。

高島
やっぱ基本的に「連絡しやすさ」って権力に対する回路を開く行為なので、整っていてメアドがあって仕事履歴がすぐわかるプロフってめっちゃ権力に把握されるためのものなんですよね。

「俺たち」的な共通言語性はあらゆる場所にあると思うんですけど、そういうのってある意味めちゃくちゃ気持ち悪いので……。「われわれ」は私は使っちゃうんですけど、それはもう離合集散が前提で連帯する対象を含む、ぐらいの意味です。

ワニウエイブ
わかりやすくしてやることって、相手の手間を省いてやることでしかないんだけど(時間かけて見てりゃわかるはずなので)、でもわかりやすくないと買ってもらえないっていう、金の流れの力関係がありますよね……。

高島
そゆことですね。それがとても悲しい……、というかジレンマですね。まあだからたぶんこのプロジェクト的なものが立ち上がったのも、そういうのを強いるSNSからの離脱ですよね、ひとつには。

ワニウエイブ
そうですね、この場所を作るにあたって、まずは「SNS最近ちょっとイヤだな」というのがありました。ぼく、いつもエモで政治ツイしてるのでRTされるのが極めてイヤなんですけど、そういう、どんな思想や生き方もインスタントに消費されてしまうこと自体が不快に感じられるようになってきた。

高島
「エモで政治ツイしてる」というのは、気持ちだけでツイートしている、という意味ですか?

ワニウエイブ
ニュースとか見て「許せねー!」って思うと、そのまま「許せねー!」と書いてしまうという意味です。戦術とか戦略とか魅せ方みたいなのがない、というか。

高島
ああ、それは私もやっちゃいますね、実生活よりは一呼吸置いてるんですけど(実生活だとすぐ「死ね!」と叫んでしまう)。

なんか結局流れて行っちゃうんですよね、大事なこととか全部。
うわあああああ〜〜って言ってる間に次が押し寄せてきてしまう。

ワニウエイブ
もちろん時々重大な問題意識が見えることもあるんだけど、それが他のくだらないものと等価に流れていってしまう。そういうのをいちいちピックアップして眺めていける場所があったらいいよなというのが、「ちょっとメディアみたいなの自分で立ち上げたい」と思ったきっかけでもあります。

高島
それはすごく大事なことだし、ここ以外にも同じようなことをする小さいシンクタンクみたいなものがいっぱい生まれたらいいですよね。

ワニウエイブ
今は、みんな次のことはじめる時期な気がしますね。周りを見ていてもそう思う。

高島
やっぱ中央勢力を解体したいし、そのためには周縁からの場外乱闘がいいかな的な。

ワニウエイブ
語彙が強くていいですね! 左翼の語彙だ。

高島
あんま強くてもよくないんだろうと思うんですが、私は殺意で動いているので……。

なんかやっぱ今アナキストの物書きっていったら栗原康が筆頭にくると思うんですけど、最近の栗原のような文体芸になっちゃうとやっぱまずいので。文体芸自体は悪くないけど、中身のない闇雲な文体芸は戦略的に失敗してますからね……。なのでこう、あんまり消費されないもの、消費しにくいものがここで発生するといいな〜とは思ってます。

ワニウエイブ
ぼくも結構、アジテーション屋さんなところあるんですけど、最近はちょっと抑えようと思うようになってきていて、結果的にここでは一人称が「ぼく」になりました。

高島
いや自覚あればいいんじゃないかと思うんですが、なるほど、そこで「抑えた」のですね。

ワニウエイブ
普段は(意識して書いてるときは)一人称(カタカナ書きの)「オレ」を使っていて、それはある種暴力的なイメージというか粗野なイメージを纏おうとしてやってる、んだと思うわけです。

高島
なるほど、武装なわけですね……。

ワニウエイブ
そうそう、ミュージシャン的な武装ですね。でも今ちょっとそういうのどうなんかというところに来ている感じがあり。

高島
つらいことはやめたほうがいい!

ワニウエイブ
いや、ぼく自身しんどいということもないんですけど、なんだろうな、そういう「自分を強く見せる」ということの悪さ、ってのが最近ずっと問題で、たぶん人によっては「マスキュリニティ」とか言ってるやつもそれなんですが……。

高島
その土俵に乗るってことですもんね。

ワニウエイブ
SNSはその、「見た目より大きく見せる」とか「雑に言う」とか「誇大に言う」みたいなのがあまりに強すぎる場所で……そういうゲームからはちょっと(ここでは)降りましょう、というのが、この場所!というイメージです。

高島
なるほど! なんか地に足をつけてやってみる、的なことですね。

ワニウエイブ
そうそう。ぼくがいうと陳腐かもですが「誠実に」やるということです(「誠実(笑)」的な角度も常に持っておきたいですけどね!)。

高島
自分はけっこう一人称は意識して揺らしていて、武装としての俺、みたいなものもあるんですけど、そもそもあまり自分を固定したくないという意図に基づいております。

ワニウエイブ
一人称が固定されると自分が固定される感覚があるんです?

高島
やっぱ女性ジェンダーで暮らしていると、基本「私」しかないので、それが心底不愉快だなとずっと思っていて。ジェンダーとして、ああ女性だから「私」ね、的な感じがすげえいやですね……。

ワニウエイブ
この間長谷川白紙氏が似たことを話されていましたね。人称問題。

高島
人称に関してはele-king連載第一回とか「福音と世界」でも書いたんですけども、「私」しか道がないのがもうキモいんですよね。自分は女性ジェンダーで暮らしている人間ですが、「俺」っていうとまあ多少ぎょっとされるというか、なんか痛々しそうな人としてしか扱われないという……。

ワニウエイブ
企業とか学校とかだと顕著にありそうですね。「私」が暗に強要される感じ。少なくともここでは「私を使え」とは言わないので!

高島
大丈夫です、勝手に適当にずらします! とはいえ一人称は難しくて、対面だとどうにも「私」と言いがちですね……。

ワニウエイブ
思想の強度はその実践の厳密性によって左右されるわけじゃないんですよね。

高島
そう、なんか「厳密に!」とか「やってるのか、やってないのか!」とかめちゃくちゃマッチョなので。そういうのすごい嫌なんですよ!!!

ワニウエイブ
ヤですね~。アナキストだって贅沢品を買うためにアルバイトしたりはするわけで、それは過渡的にはしょうがない、というか「そういう幅があることが強度やろ」とすら思うな……。

高島
自覚が大事、意志が大事。

ワニウエイブ
規範になってしまって「また『私』と言ってしまった……」みたい自己嫌悪になるのもよくないし…。

高島
私のテーゼは「生存こそ抵抗」なんで、自己批判は必要なんですけど、基本的には生存こそ長く抵抗をやっていくための土台なので、そのための妥協とか、清濁合わせ飲んでいくのが大事だと思っています。潔癖になりたくない。

ワニウエイブ
うん、個人的には妥協ですらないと思います。それ妥協って言い出しちゃうとしんどすぎる。


……で! 要はこういうふうにぼくたちが会話するのをこれから「記事」にして載せていくという試みをやっていくつもりです。
なんでこういう形式にしたのかとかもいろいろ理由があるんですが、まず「一人の目線じゃないこと」ってのがいいなと思っており……。

高島
それは大事です! 変な言葉ですが「ワニウエイブ・クラブ」みたいになっちゃうのが嫌ってことですよね?

ワニウエイブ
ぼくが誰かになにか教えてやれるような存在だとあんまり自分で思ってないんですよね、むしろ教わりたいぐらいで。ずっとこういうようなメディアをつくるような妄想はしてたんですけど、極力ボーイズクラブ的なものは避けたかったです。

高島
あんまワニウエイブさんが始めてそうなるかはわかんないですけど、閉鎖的になってゆるいホモソみたいになっちゃうの、一番意味ないですもんね、それこそ「俺たちのインターネット」的な共通言語でやりとりしていくような……。

ワニウエイブ
攻撃的でないゆるいホモソ自体を敵視するというようなつもりもないんですけど、ここではひとまずは開けていたいという理想があります。ネットミーム的なのも極力排していきたいですね。ネットミームを排してワニウエイブに何が残るんだ……?

高島
いや色々残るでしょうww

ワニウエイブ
なんで週一か隔週ぐらいで、各々目についたトピックを持ち寄って話す……みたいなことができればなと思っております。

高島
そうですね。最近鬱になっちゃったこともあってあまり機敏に動けないので、ゆっくり議題に対しておしゃべりしていくほうが今の自分にはやりやすいですね……。

ワニウエイブ
急かすつもりもないです! お金も払っていないので……! っていうか「お金を払われることで他人に急かされてもいい状態になる」ってめっちゃイヤじゃないか……?

高島
いやそれわかります。時間を他人に売るとか、「頑張り」を他人に売る、という発想自体がそもそもヤバいんですよね。

これはデイヴィット・グレーバーの「ブルシット・ジョブ」にも書いてあるんですが……他人に時間を売るって何!?ってなりますよね。

ワニウエイブ
他人に時間を売る、意味不明ですね。なんで時間を……?

高島
マジで時間概念を他人と共有したくない!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ワニウエイブ
時間概念を他人と共有、ってのはどういう状態を指してます?

高島
いや、大なり小なりあるんですけど、天皇制と暦に始まり、私の「朝」と他人の「朝」が同じ時間帯にされてしまうところとか、15時は15時であるとだけ了解されている状況とか、もろもろですね。

ワニウエイブ
かなり根本的な話だ!

高島
この話もいずれがっつりやりましょう。

ワニウエイブ
他人事みたいで失敬な言い方ですが「なんか面白そう」と思いました。ここでは、いままで僕が個人としてnoteでやってたようなこともちょっと移動してこようかなと思っております。もし、ぼくや高島さん以外にも「note卒したいな」と思っていて、「自分でWordPressしたくねえよ」っていう人で興味もった人は言ってくれれば、ここで取り扱うのもアリです!

高島
なるほど、言えばスラムの一員になれるわけですね!!

ワニウエイブ
徐々にパーティー増やしていけたらよいなとおもってます、持続可能な速度と熱量で……。できればジェンダー比も全うにしたい。

高島
私は私で先にnote卒してて、自分の仕事用のサイトをどうにかこしらえている最中です。とはいえ拠点は多いに越したことないので、こっちにも出没するつもりでいます。

ワニウエイブ
すぐコケるか、長くなるかはわからないですがよろしくおねがいします!

高島
よろしくお願いします!

#01 end