ワニウエイブ:ミュージシャン/フリーライター
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2020/11/10収録

高島鈴
さて第二回ですね!

ワニウエイブ
はい第二回!

高島鈴
前回わりと、思ったよりは読んでもらえたような感じがしましたね。普通に嬉しかった……。

ワニウエイブ
いやほんと、意外なまでに注目度高かったですね。

高島鈴
で、今回はワニウエイブさんがわりと気にかけてくださっていた事件の話から入ろう、ということになっておりました。

ワニウエイブ
一応、前回は発足(違和感のある言い方だ)して初回ということもあって「なんで作ったのか」という話でしたけど、ここからは1トピック挙げて、それについて二人(以上)で話すという枠組みにしたい、というのがあり……。そんなわけで今回取り扱うトピックはその、「ワニウエイブがなんか気になった事件」の話です……!

高島鈴
「邦キチ事件」ですね。いや、そんなに「事件」っていうほどでもないんでしょうけど、とりあえず事件と呼んでおきます。

ワニウエイブ
ぼくらは「邦キチ事件」と呼んでいます。「邦キチ」というのは『邦キチ! 映子さん』というインターネット上で連載されているマンガ……ですよね。

Twitterにページで流れてくるマンガにことごとくノれないという呪いをかけられた僕でさえ知ってるマンガなので、おそらく読んでる人多いと思います。高島さんに説明してもらったほうがいいな。

高島鈴
私もなんだかんだ毎回読んでいます。
『邦キチ!映子さん』は、主人公の「邦キチ」こと邦画の熱烈なファンである映子さんと、映画部の部長との会話を中心にした映画レビュー漫画ですが、それに関して私がちょっと感想を書いたんですよ。“ここ最近の邦キチ部長、邦キチのこと意識すると急に邦キチを「女」とか言い出すところが最悪なので絶対邦キチとどうにかなってほしくない”ってツイートなんですけど。

自分としては、別に部長がずっと女性を「女」と呼んでしまう人間のままでいるとは全く思っていないし、今後変わっていくんだろうなとは普通に予想していて、その上で「今の部長が映子さんにアタックかけたら本当にやだな」と思っていたのを、そのまま書きました。

ワニウエイブ
まあ、なんていうのかな、感想ですよね。

高島鈴
感想ですね。なんか「このキャラむかつくな」とか「絶対負けて欲しくない」とか、そういうのと同じ気持ちで書いてました。

そしたら作者本人から“部長の「女と海行った方が楽しいのか!?」という台詞は未熟な思春期の人間ならではの現実と自意識の葛藤というか、むしろ壮大なミスリードの台詞なんですけどね…”という引用RTが飛んできて。

それでまあ、引用RTだったので返事した方がいいかなとは思って、“そういうミスリードをやっちゃう「状態」にあるから「ここ最近の部長」と邦キチはどうにかなってほしくない、という意味です。どこかで変わってくれるはずだと期待してます”って書いたんですね。

ワニウエイブ
このあたりどこまでTwitterのを引用していいのかわからないのでひとまず埋め込まずテキストで載っけてリンク貼る感じにします。これを読んでる皆さんにはクリックで行ってもらって、ぶら下がってるレスとか引用RTとか見てもらうのがいいかな。

高島鈴
その時点ですでに最初の作者からの引用リプには「漫画読むセンスがない人だ」とか、そういうリプがついていて、すでになんか私の感想は「厄介なフェミニストが因縁つけてきた」みたいな扱いになっていたのですが。

ワニウエイブ
それ横から見てて、「ヒヤー」ってなっちゃった。

高島鈴
そのあとなんか“私も別に服部先生のこと信頼は全くしてないですが、「部長が痛々しい思春期を過ごしているキャラである」という造形自体は理解している、ということです。邦キチが白いワンピースの女性を夏の象徴と考えている、という描写などには普通に「うへえ……」となった。”というふうにつぶやいて……。
ここ確か別の人が「自分はそもそも服部先生のこと信頼できる作者だと思ってない」みたいなこと書いてて、それを受けて自分もそうだなと思って書いたんだと思います。

このとき公開されていたのがサマーウォーズに関しての漫画で、サマーウォーズの「夏っぽさ」の描写を茶化しながら紹介するような文脈だったはずです。

ワニウエイブ
この段階ですでに問題の本質がかなり拡散していってる印象受けますね。

高島鈴
んで、このツイートに対してさらに服部先生から引用がきて、“そちらも僕の真意とは逆で、むしろ「ベタな夏アニメあるある」として白いワンピースをネタにしているだけで、実際に邦キチが海に行ったシーンでは紺色のゆるいワンピースにドクターマーチンのサンダルを履いています。”って返ってきたんですね……。

ワニウエイブ
高島さんはおそらく、それが「あるある」であること自体を問題視する立場でしょうから、噛み合ってないですね。

高島鈴
そういうことです。それに対して、何言われたのかちょっと掘り返すのも面倒なんですが、「漫画読み慣れていない人は誤読するかもしれないから解説しました、もう言及はしません」みたいなこと書き込まれて、そこでやりとりが終わったんですけど。

「漫画読み慣れてない人」か〜、そうか〜、と思ったのは覚えてます。

ワニウエイブ
一部始終をこまかく見てたわけではないんですが、その流れをTLで見てまして、ぼく。

なんかこれはTwitter的な悪だな、と思ったわけです。一つ一つ取り出して眺めるべき問題意識があったはずなのに、一瞬でいろんな方向に拡散してしまい、よくわからない感じで終わる、という。

高島さんにいま説明してもらったところだけで分解しても、複数の問題や問題意識が混在しているように思えます。

高島鈴
私は、まあまず第一にはフェミニストがよく遭うディスコミュニケーションだなと思ってて。フェミニストを名乗る人間がフェミニストっぽい意見を言うと、全部作品の否定みたいに扱われてしまう。

ワニウエイブ
作品を否定されているのだから守らなければいけない、という防衛的な反応に見えますよね。

高島鈴
フェミニストは多くの場所で「否定してくる人」扱いされる、というのがデフォルトなので、なんかまたこういうやつか〜〜、と思った記憶はありますね。

この対談も、一部の読者には「被害者ぶるな」とか言われそうだな、とか思いながらチャットしています。

ワニウエイブ
まず“ここ最近の邦キチ部長、邦キチのこと意識すると急に邦キチを「女」とか言い出すところが最悪なので絶対邦キチとどうにかなってほしくない”っていうのは、まあシンプルな感想ですし、見方によってはユーモラスな発言にも見える。そして、その後服部先生が説明してることと特に矛盾してない(というかそういう感想になりうるように描かれた、ということでは)ように見える。この感想を作品の「否定」や「誤読」と捉えてしまうときに、「相手がフェミニストである」ということが関係している、ようにはどうしても見えますね。

高島鈴
うん、まず服部先生がなんで私に対して説明をしたのか、というところから結構不思議なんですよね。

「そういう感想になるように書かれた」、というか、若気の至り的な描写に対して読者には微笑ましく見守って欲しかったのかな……とは思ったんですけど。

ワニウエイブ
思春期のありがちな痛い行動としてそう描いたので「微笑ましいと読み取ってほしい」、ということだとは思います。でもやっぱり同時に(仮に第二の問題としますが)「個人のこと女っていうやつ最悪問題」があり、それで怒る、までいかなくても「ハ?」 ってなる人がいるのはしょうがないような気がしてしまうな。

高島鈴
そう、「若気の至りとして、女性を「女」と呼んでしまう」状態、いずれ変化するものとわかっていても、やっぱり実際それをされる側の女の子はたまったもんじゃないわけじゃないですか。

ワニウエイブ
「男が女性に対してうまく言葉を扱えないのをかわいいと思ってくれ」、っていうのはハタ迷惑な話ですね。現実にも暗に「かわいいと思って許してくれ」を強いてくるような場面ってすごく多い気がする。これ第三の問題だな。

高島鈴
だから作品の中で部長がそういう状態にあるということも、それが意図されたリアルな描写であることもわかってるんですけど、やっぱ邦キチには今のまま変な接近をしないでくれよ〜〜〜、みたいな気持ちがあり。

ワニウエイブ
それはある種ファンとしての気持ちですよね。

高島鈴
そうですね。なんだかんだずっと読んでますからね……。普通に作品世界には敬意払ってはいるつもりでいたんですけど。

ワニウエイブ
Twitterって、そのやり取りが行われてる中でそもそも「女を女と呼んでなにが悪いんだ」みたいな人も混じってきてリプライに参戦しだしたりするんだよな。これまた別の問題なんですが。

高島鈴
無限に問題がずらされていく感覚はありましたね。あと、なんかけっこう多かった反応は、「中国人がアルって語尾で話す漫画に対して何言ってるんだ」みたいなやつでした。いや、そこも私が服部先生を信頼していないポイントだよ……と思いましたが、まあ、返事はしてないです。

ワニウエイブ
「中国人がアルって語尾で話す漫画」が問題視されうる、ということを理解してるからその反応が出てくるわけですよね。「そこ突っつかれる前に先手打って言っちゃえ」みたいなのすごい防衛的だなあ。良くない意味で。

高島鈴
そうなんですよね。たぶん「デフォルメ」とか「あるある」をギャグにしている作品に何をいうんだ、って意味だと思うんですけど。

ワニウエイブ
あんま精神分析みたいなの、専門家でもないんですべきじゃないんですけど、やはり内心「自分がミソジニスト/人種差別主義者だと見なされる」ということを非常に恐れており、そのために先手打って防衛線張っているように見える。

高島鈴
なんなんですかね、あの姿勢……? 本当によく衝突しますね。実際デフォルメやあるあるって暴力的なのは当たり前じゃないですか。

ワニウエイブ
デフォルメは暴力的ですよね。ヘタリアの話あったな……。

高島鈴
ヘタリアもほんとに……いろんな意味で無理ですね。

ワニウエイブ
そして二言目には表現規制がどうこう、表現の自由がどうこうみたいな話になる。それもめっちゃ飛躍なんですけどね。いや、批判をお前ら今まさに規制しようとしてないか?

高島鈴
暴力性を0にしろとは思ってなくて、ただ誠実さがほしいんですよ。ここに描いてあるものは現実と地続きである、ということに対する意識がほしい。もうなんか、見疲れたような光景ですね。ずーーっと同じような話が繰り返されている。

ワニウエイブ
その服部先生と高島さんのやり取りを見て、「これTwitterでずっとやっててもしょうがなさそうだな」と思ったのを覚えてます。こういうところで一個一個話さねばならんなと思った。

高島鈴
そう、でもなんか、ず〜〜〜〜〜〜〜〜っとそうなわけじゃないですか。

ワニウエイブ
ずーーーーーーーっとそうですね。

高島鈴
私からするともう全部が全部そんな感じ、何かフェミニストっぽいことをカルチャーに対して言うともうめちゃくちゃなリプがいっぱい飛んできて、議論とかしようもないし、そもそも誤読だし、みたいなことが死ぬほどある。

ワニウエイブ
うん、「文藝」で書かれてたこともこの話でしたね。

高島鈴
ここでこういうふうに書いている今も実際おびえてはいるんですよね。これが出たとき私は何て言われるんだろう、といつも思うし、そう思っていると表明することすら責められる材料になるわけだから。

ワニウエイブ
ああ……今回すごい負担を強いてしまってるな、申し訳ないです。

高島鈴
今はだからあんまりもうSNS上の議論を見ずに、もっと広い場所に議論を放り出していかなくちゃいけないとは思っているんですけど。

ワニウエイブ
高島さんが何か言うのは自由なはずですから。マンガ何描くのも自由なのとおなじで、それも保証されてないといけない。

高島鈴
こういう、発言するフェミニストが自意識過剰にならざるを得ない状況というのが、フェミニズムに相当理解のある人であっても男性ジェンダーの人だと結構ピンときてなかったりするんです。

ワニウエイブ
実際ぼくもずっと知らなかったように思います。

高島鈴
私が何か書くときも、わりといろいろと留保をつけがちで、それはよくないと自覚もしているので頑張って後から削るようにはしているんですけど、「もっとはっきり言い切ったほうがいいですよ!」ってめちゃくちゃ言われたりとか。

ワニウエイブ
ただ、あのやり取りを見ていて、こういうことが毎日起こってるんだろうな、とは思いました。だから、あのやり取りには意味があったし、それをここに残す意味もあると思う。

高島鈴
そうであればいいなと思います……が、私が矢面に立つ恐怖を常に持っていることは忘れないで欲しいです(笑)。やっぱりライターってスポークスマンになってしまいがちだから。それ(自意識過剰にならざるを得ないこと)を逆手にとって、『福音と世界』では「先回り」と称した留保をあえて2節にわたって書きました。

くどいくらい留保をつけることで、「そうせざるを得ない立場」を暴きたいと思っていたんですが、結構な数の人(男性)から「もっとはっきり言い切ればよかったのに」って言われました。……なんか責めるような口調になってしまって、すいません。

ワニウエイブ
自分が、男性としてどういうふうに向き合うのかは難しいですね……。僕は自分のことを決して「フェミニスト」とは名乗らないのですが、それは「フェミニスト男性」としてスティルバッドな男性に、こうあればベターになれるよ、これからの社会はこういうロールがいいんだよね、っていうふうに「教える」みたいなのがとてもイヤだからです。

高島鈴
そのへん難しいですよね。男性ジェンダーで生きている人はすごく微妙な立場に立たされてしまうなと思います。

ワニウエイブ
僕は男性の悪い部分を持っており、そのことをときに批判される余地がある、ということを「恐れない」ことにしています。怒られるようなこと言ったなら、しっかり怒られりゃいいじゃん、という。

高島鈴
それは大事な姿勢なんじゃないでしょうか。

ワニウエイブ
自分が改善の余地がある人間だということを、ただありのままに受け入れるということが、多分みんな難しいんだよな。

高島鈴
批判されることを恐れないというのは、人間みな持っておきたい部分ですよね。すごく難しいですけどね……。

ワニウエイブ
「改善し終わった自分」として振る舞ってしまうことの悪さってめっちゃあって、フェミニスト男性が、女性にフェミニズムについて「教えてあげる」的なマンスプレイニングの事案も見かけることもあるし……。

高島鈴
なんか、別に女性側がそれを求めていて、自分から「教えて欲しい」と言っていて、実際にその男性の方が教えるべき知識を持っていて、同時に偉そうだとか、権力を振りかざすような真似をしないのであれば、それでもいいと思うんですよ。

ワニウエイブ
難しいんだよな……。

高島鈴
実際私がきちんとフェミニズムの勉強をしなきゃ、と思ったきっかけは、男性の先生から勧められたハラウェイの「サイボーグ宣言」でした。

ワニウエイブ
この対談もマジどこまで何を言っていいのかというのはメッチャ難しい、ときに変なことを言う可能性があるので怒ってくれてよいです!

僕は基本的に暴力表現やポルノを愛好していて子供っぽい人間ですが、そのことが自分の評判を傷つけるときがきたら、そうあるべきだと思います。評判が傷つくべくして傷ついてるだけなので……。「評判が傷ついてもいいや」って感じで思考停止して「注意を怠ってもよい」という意味ではなくて、ですが。

高島鈴
別に暴力表現もポルノも全然いいと思いますよ。ただ求めてないのになんか言ってくるとか、やたら偉そうとか、実際にはそんなに教えるほどの知識がないのに教えようとしてくるとか、そういう態度で接してくる「フェミニスト男性」がいやなだけで。

ワニウエイブ
「多そう」と思っています(直感です)。

高島鈴
多いですね。あと自分としては、「そういうふうになりたくないから、フェミニストは名乗らない」と言って、言うべき場面で言うべきことを言わずに黙っている人が一番不愉快です。難しいのですが、「そういうのは女性が言うべきだから」と言って、批判が必要な場面で黙っている人とか、いるわけですよ。そういう当事者主義に偏っていくの、すごく嫌なんですよね。多分名乗りはどっちでもよくて、大事なのは必要な場面で必要な行動をとるかどうか、なんだと思います。

ワニウエイブ
アー難しいな、こういうトピックを見かけると「オレみたいなもんがホイホイ入ってってなんか言っていい問題かコレ!?」みたいな自問はやっぱ出てくる。

高島鈴
特にネット上だと介入が難しいケースも多いとは思うんですけど……たとえば飲み会でやばい発言をした人が同じテーブルにいたときに、「こいつまずいこと言ったけど、自分が批判すべきじゃないな」と思って黙る、みたいなことをされると、一番嫌です。

ワニウエイブ
あ~~なるほど……。

高島鈴
目の前で起きていることに、わかっているなら介入して欲しいんです、わかってる人が。

そこで「一番わかっている人が注意すべきだが、この中では誰が一番わかってるんだ!!?」みたいなお見合いをしないでほしい。

ワニウエイブ
高島さんをAとして、高島さんと喋ってる誰かBとし、自分をCとして、いま飲み屋にいます。なんかラインを越えた発言がBから高島さんに投げかけられたときCである僕が「お前何言ったかわかってる?」と反射で言えるかどうか、か……。

高島鈴
B「女性がいると話しづらいですねえ、ガハハ」みたいな状況に、Cとしてそのまま「それ失礼じゃないですか?」と言うべきではないか、って感じです。

Aが私である場合は、全然私は反射で「は?」って言えると思うんで、Aが私だとかえってわかりにくいかもしれないですけど(笑)。

ワニウエイブ
たとえばAはそう言われても尚Bとの関係性を悪くしたくなかった場合みたいなのもあるのではとかやっぱ考えてしまうな……。

高島鈴
うん、そういうの考えざるを得ない場合もありますよね。

ワニウエイブ
Aの口から「は?」が出たら「それ(AがBとの円滑な関係を望んでいること)はないな」とわかるので参戦できるんですが。

高島鈴
第三者から指摘して介入してもらった方がありがたい状況ってたぶん少なくないはずです。

あ、当人がどう思ってるかがネックになってしまうということですか?

ワニウエイブ
そうですね。A当人が、オレの介入によって場の空気が壊滅的になってしまうことを望んでいない場合……といいますか。

高島鈴
そこの判断は自分の知識で線引きしていいと思います。場の空気はむしろ壊れた方が流れが変わることもあると思いますし。

なんかそこの介入に関して、Aが傷ついたかどうかを中心に考えるのではなくて(他人が傷付いたか否かを確認・確信するのは非常に難しいことです)、C自身が「Bの発言は公共の場でしていい発言じゃない」っていうジャッジを下すべきなんじゃないでしょうか。自分の倫理観として、公共に出していいか悪いかで考えて欲しい。

ワニウエイブ
なるほど。納得できました。どのみち言うべきでないことは言うべきでないということだな。いやそもそも僕は「場の空気」とかあんまり気にするタイプの人間ではないんですが。

高島鈴
まーでも、そうですね、話題にもよりますね。なんか、A本人置いてけぼりになりすぎるのもよくないしな。難しい。多分個別の関係性にも大きく依拠すると思います。

ワニウエイブ
関係性が前提なのは、絶対そうですよね。

高島鈴
究極、方程式的なものってないんですよね。やっぱ状況による。

ていうかそういう「複雑な状況」がある、ということを、まず共有したいですよね。みんなで……みんなで、というのもきな臭いかな……要は「公共」がほしい、という話なんですけど。「結局あなたは私を責めているんでしょう?」的な線引きが、状況の複雑さに対して効かない場合のほうがよほど多いということが広く認知されるといいですね。

ワニウエイブ
複雑なことが眼前にあるとき、みな自分に好ましい単純化のしかたで受け入れるようなところはあると思います。140字という制限があると特に。

高島鈴
そうですね。だからTwitterは議論に向いていない。

ワニウエイブ
なので、戻りますけど、「邦キチ事件」はここを立ち上げようと思ったもっとも大きい動機になっています。

高島鈴
自分としてはわりとよくあることだなはいはい、で流してたんですが、流しすぎてもよくないし、こういう些末なことこそ拾ってよく考えておくべきかもしれないですよね。

ワニウエイブ
結構ショッキングだったんですよね、自分の中で。

高島鈴
どこが一番ショッキングでした?

ワニウエイブ
これ僕の体感でしかないんですけど! 「ヒップホップリスナーの中ではかなりリベラルだと思われるクラスタ」というのがあり、ワニウエイブはわりとそういう人たちと多くTwitterで繋がっているのですが……。

高島鈴
ほうほう。

ワニウエイブ
そこが高島さんの意見……いや“感想”に対して防衛的なフォームをとったのがショッキングでした。

高島鈴
あー、そうだったんですね。

ワニウエイブ
というか(信頼してたとかとは全然別次元の話ですが)まさに服部先生自身もそういうクラスタと接続がある人だと無根拠にぼんやり思っていた。なんで、え、これぐらいちょっと感想言うのも(読めてない扱いして自己防衛しないと)ダメなの!? っていう。

高島鈴
ううーん、なるほど。

ワニウエイブ
いやまったく個人的に知り合いとか、そういうことはないんですけど。マンガもほとんど読んだことないし。

高島鈴
まあでもクラスタが近いところで「割れる」の、怖いですよね。

ワニウエイブ
これが幻想だということは重々承知してたはずなんですけど、ヒップホップリスナーで、ワニウエイブフォローしてて、おそらく音源聴いてくれたりしている人たちとはうっすら連帯しているんだと頭のどこかで思ってた。

高島鈴
あ〜、そうですよね、「曲で言ってたことが伝わってなかった」的な感覚もあるって感じでしょうか。

ワニウエイブ
たぶんワニウエイブ楽曲で直接的にミソジニー批判をしてる楽曲はないと思うんですけど……なんだろうな、世の中の見方として「防衛的でない人」たちだと、本当にうっすら思っていた、んだとおもいます。

高島鈴
それは確かにショッキングですよね。規模は違いますが、まさにフェミニストの中でトランス排除が可視化されたときのような。

共闘できたはずの人ができてなかった、的な……。

ワニウエイブ
うん、だからほんと、人間を属性や数字で考える、判った気になるのは愚かなことなんですよ。「ワニウエイブのフォロワー」とか「フェミニスト」とか、なんでもいいや。「アナキスト」とか、「女」とか。

高島鈴
そう、複雑なんですよね、人間。

ワニウエイブ
各々独自に感想を抱き、好きなものも変わってくる、ということをありのままに受け入れられないから「またフェミニストが文句つけてきてるぞ」みたいな誤った現実認識に繋がってしまう。この人は「フェミニスト」だから敵、とか「リベラル」だからわかりあえるはず、とか、そんなシンプルじゃないんだよな。

高島鈴
もうちょっと孤独にならねばならないですよね、人間は。

ワニウエイブ
近代的個人にならねばならない。

高島鈴
近代きてないですからね、日本列島……。民衆革命で近代を喚びましょう。

ワニウエイブ
それでオチるとギャグになっちゃうのでやめましょう!

高島鈴
そうですね……(笑)。そこは本気で言っている部分なので。

まあでもこのあたりでまとめておきましょうか。結論特に出さなくていいと思ってて。

ワニウエイブ
うん、結論はいらないですね。ないもん。強いて言うなら「やってくしかない」。

高島鈴
おのおの答えが出ない状況に、その複雑さを忘れないまま四苦八苦するしかないということですね。んで、このチャットはその四苦八苦部分をお見せしている。ここに書いたことは多分今後意見として変わることもあるでしょうが、今の私やワニウエイブさんが悩んだり考えたりしているのはこのへんです、ということでした。

ワニウエイブ
僕としては、この場所というか、これをやってくということが、現状の回答ではあります。

#02 End