登場人物
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高島鈴慈雨名前氏秋葉令


2020/12/19収録

高島鈴
ぼちぼち始めたいと思います。みなさんお揃いでしょうか?

慈雨
はい!よろしくお願いします。

名前氏
こんばんはー、よろしくお願いします!

高島鈴
今回はALTSLUM事務方から私と、あと3人のライターさんに参加していただくことになっています! 今回初参加のお二人には、簡単に自己紹介をしていただいてもよろしいでしょうか。

慈雨
初めまして。ツイッターを拠点に短歌を詠むインターネット歌人の慈雨です。よろしくお願いします。

名前氏
はじめまして、名前氏と申します。Twitter、はてなブログ、zine配り、イラストなどをやっています。イスラム史の学生です。

高島鈴
ありがとうございます! よろしくお願いします。秋葉さんも今回もご参加ありがとうございます!

さて、今回のテーマは「贈り物の話」です。発案したのは私なのですが、きっかけはちょうど秋口に数人の友人に誕生日プレゼントを送る機会があり、そういえば自分はいつも贈り物に迷っているな……と気付いたことでした。なので、まずはみなさんが最近した「贈り物」について、何かうかがえればと思うのですが、いかがでしょう?

名前氏
直近は母の誕生日にマニキュアとアイシャドウという超無難でよく使いそうなものをあげたかなぁ……。

慈雨
相手への負担にならぬようアマギフやスタバチケットになりがちですね。相手が「贈り物」を受け取れる状態か気にしてしまいがちなので。近しい人にはボディケアグッズ(入浴用品など)を送ってご自愛を簡単に形にできるようにしています。

名前氏
友達だと関係壊れないかドッキドキでいろんなものあげたりもらったりしてきた気がするけれど家族には恒例行事的にものをあげられる。

高島鈴
相手が贈り物を受け取れる状態かどうか、というのは重要なポイントですね……。家族だとコスメの好みや何を使っているかも把握しやすいかと思いますが、普段生活を共にしていない相手だと、ボディケアすら脅迫的に思われる可能性はある。

秋葉令
もらった話でもいいですか。

高島鈴
もらった話でもいいです!

秋葉令
誕生日プレゼントって、家族外では、ある程度の親密度が上がらないと発生しないイベントだと思います。友人がほぼゼロに近いので、本当に一度しかなくて、同級生が寮のベッドに菓子入りの袋を投げ込んできたことがありました。こちらに目すら合わせなかった。

高島鈴
贈り物、やはり手紙と同じく相手について考えることなので、すごく悩みます。あげたいものと相手がもらってうれしいものってだいたい違うし。

「投げ込んできた」というのは、なんか、すごい話ですね……。

秋葉令
こういう殺伐とした話が想定されているのかどうか。

慈雨
義実家への父の日、母の日、敬老の日は毎年悩んでおります。婦人画報でお取り寄せしてみたりビルケンのサンダルを贈ってみたりはたまたサボンのボディスクラブなどなど毎回試されている気がして……。

高島鈴
でもやっぱ、それって渡し方も含めて、相手のことが見えていない「贈り物」だったわけですよね。それってあんまり意味がないし。義実家は確かに難しそう。下手なもの送れない、的なプレッシャーがありますね。

秋葉令
まずものを贈る・贈られるに至るまでの親密度が発生したことが人生でほぼないんですよ。どうやったらそれが起きるんですか。

高島鈴
贈り物が贈られる側にとって強迫的に働く場合がある一方で、送る側にとって強迫的に働くこともある。贈る・贈られる、たぶん一方には秋葉さんのいうような親密性の問題ではあるんですが、一方では儀礼の問題でもあるんだと思うんですね。

名前氏
ささやかなものはあげたりもらったりしたい派です。友達がみんな体弱いから会う人会う人に祈り!とか言ってナザールボンジューあげてた時期がある。トルコの魔除けのお守りで、メルカリで大量に買ってストックしといたという。

高島鈴
イスラム史の人からトルコの魔除けもらうの、なんか説得力あっていいですね(笑)。

慈雨
トルコの目玉だ!

高島鈴
たとえばバイト辞める日にお菓子持ってくとか、そういう「ダルい贈り物」もあるわけで。あと親しくなくても物をあげるのが好きな人とかが近隣にいると、お返しが発生したりもしますね。

慈雨
物より気持ちとは言いますけど、実際オッセンスいいじゃんと思われたい我欲がすごいし、何かもらったら半返しみたいなところあります。

高島鈴
そう、「センスいいじゃん」と思われたい、みたいな闘争の場でもあるかもしれない。

秋葉令
いま検索しましたがトルコの目玉いいですね。いのちの輝きくんを感じる。

高島鈴
いのちの輝きくん、完全に忘却していた。

慈雨
これは前職の話で教員の中だけかもしれないんですがお中元お歳暮お土産合戦は未だ根強くて、永遠に物が相手との間を行ったり来たりしていますね。

高島鈴
あ〜、なるほど。

名前氏
そうか、センスが問われるのか……。闘争だと思ったことはないと気づきました。毛布とかカロリーメイトとか生活必需品をあげることが多いです。

高島鈴
今とかまさにお歳暮の季節なわけで、そういう磁場に巻き込まれると、やっぱり他の人のお歳暮とも比べられちゃうかも、とか気にすることが増えますね。名前氏さんのプレゼントは「生存セット」感があっていいっすね。

秋葉令
たんなる儀礼のめんどい贈与といえば年賀状とかありますね。くそだるい。

高島鈴
年賀状な〜〜〜〜。めんどくさいですね。もうほとんど誰ともやりとりしてないですが……。

名前氏
貧乏人のよくわかんない人枠としてそういうお中元的な磁場から死ぬまで逃げたいな……。

あ。でも年賀状は友達少ない人ほど出せと中井久夫が言ってて、やめなきゃよかったーと思いました。

秋葉令
われわれは人間社会で礼儀を守る人間をやっているぞということを証明するための儀式。一回はじめるとやめ時が見つからないとされている。

慈雨
年賀状も本当にだるい文化ですね。何百枚も印刷して手書きでメッセージを入れていく両親見てうわぁ〜と思っていました。親よりフォロワーのが会っている。

高島鈴
年賀状とかお歳暮とか、こう、社会通念として贈ることが決定している贈り物ってやっぱ重いですよね。

名前氏
気の置けない友達とか遠くの人に5枚くらい猫の絵でも描いて出したい。

高島鈴
やっぱ義務感の中で贈り物したくない。だから本当は誕生日とかにわざわざかこつけなくても、もうなんの意味もないプレゼントとか、していきたいのですよね……お金には限りがあるからそれも思うようにはできないんですが。

秋葉令
そういう儀礼にメリットがあった時代って終わってると思うんですよ。年賀状の92%ぐらいは周囲がやっててやめられないから送られてると思う。

慈雨
特になんの意味もないプレゼント、愛がありますね。

高島鈴
そう、個別具体的な贈与の、シンプルに相手にこれをあげたい、みたいな気持ちを大事にしたいです。

秋葉令
理想をいえば、誕生日ではない日に誕生日パーティをしたいんですよね。誕生日にやると儀礼的な義務のだるい感じが発生してしまう。

名前氏
友達が調子悪い時にソイジョイセットとかカロリーメイトを段ボールで送ってるんですが、逃げないで食べてくれる友達が心強い。貰うのも負担だったりしないかと思うんですよ。

誕生日じゃない時の誕生日パーティーいいな。

高島鈴
なんでもない日おめでとう! って感じですね。

慈雨
そうなると私は果物とかを送っていいか聞いて送ってしまいがちなヒューマンです。なんでもない日にもっとおしゃれで可愛いものあげたい(オッと思われたい見栄から逃れられないです)。

高島鈴
究極相手が欲しい物って自分の想像だけではぴったり当てることはほとんどできなくて、だからある程度エゴになると思うんですけど、その悩む時間とか相手のこと考える時間とかを喜んでもらえると一番ありがたい……んですけど、こういうこと考えるのも身勝手かもしれないですね。

秋葉令
いま書いてる高校生の部活の話で、部長がぜんぜん部員たちの誕生日を覚えなくて、まったく誕生日じゃない日に誕生日プレゼントを送ってくる……という設定があるんです。うまく話に組み込めないのでまだ使えないんですけど。そういうのがいちばんいいと思っている。

高島鈴
誕生日という口実がないと祝えないのかっていったら全然そうじゃないですからね。「お前がいてくれる! ありがとう!」でぜんぜん十分じゃん、と思う。

慈雨
贈り物を考えた時間が相手の喜びに比例するか考えてしまう、自分の好きなものをあげたらいいって言うけど、難しいですね。でも手紙がついていたらすごく嬉しいです。

高島鈴
親友がもらったものをぜんっぜん処分できない人で、なので本当にプレゼントするときは何かしら役に立つ物にしようと思って、ここ数年本をあげてます。

名前氏
バイオリンを聴かせて、波動を感じさせながら手で混ぜて育てた塩というスピリチュアルなものに知人がはまってしまって、お裾分けされて困ったことがあります。

高島鈴
それは困る。そういうのどうするのが正解なんですかね?「絶対いらないけど断ったら相手の何かを否定してしまう」タイプのプレゼント。

名前氏
そうです、断ったらすごい剣幕で怒られて絶縁することになりました。

秋葉令
スピリチュアルにはまる人はわりにもの贈りますよね。相手にも摂取させて安心したいんだと思う。テレビショッピングにはまってる親戚が謎の錠剤を薦めてきたりします。

名前氏
持病があるとスピリチュアルの人とか民間医療の人にうさんくさいものをすすめられがち。

慈雨
私もコレクションが多いパートナーには役立つような棚を何回かあげましたね。役に立つもの、立たないもの、関係性によるのか。

高島鈴
関係性によるのはほんとにそうだと思いますね。全部そう、と言っちゃうと雑ですけど、スピリチュアル系も、やっぱ距離置ける相手かどうかっていうのが問題になるじゃないですか。たとえば親が善意で「子宮の声を聞け!」みたいな本送ってくるとか。

秋葉令
親戚だと逃れがたい。同じ家で絶縁しています。

慈雨
あ〜。頂いて写真でクラウド化して廃棄してはダメですかね。

高島鈴
距離置きづらい相手からそういうのが来るとね、大変ですね。写真でクラウド化は新しいな。「全部そうしてるので」とか言えばどうにかなりそう。

名前氏
私は塩の人のあまりのいいように腹が立ちすぎて、その人から昔もらった神の人からのメッセージとかいう本、売ってしまったな、捨てるより悪いことをしてる気分になった。

慈雨
地球に厳しいやり方ですが……売るのもありです。一年間一緒に働いた男性からネックレスもらって売りました。身に付けるものは困る。

高島鈴
もらいものを売る罪悪感ってどこから来るんでしょうね。やっぱり気持ちを他人の手に委ねて放棄するような感じがするからなのかな。

身につけるものは嫌ですね、「今日あれつけてないの?」とか言われたりする可能性もあるし。もちろんそれも関係性によると思うんですが!

秋葉令
もの贈る行為って根本にその暴力性があると思うんですよ。
人間関係をいい感じにコントロールしたり支配したいという欲求がどこかにある。それはゼロにできない。

高島鈴
ネックレスとかまさにそれですよね、さして親しくない相手のファッションに介入しようとしてる意図が透けて見えて怖い。

慈雨
食べ物ならまだお裾分けという言葉で片付けられるのに物はなくならないからなぁ……。

名前氏
バイトであげる飴ですら、なんとなくあげてるっちゃあげてるけど、敵意はないよ、とかも考えながらあげてる。

高島鈴
自分は女子校だったので、卒業記念でネックレスもらったんですけど、すごくいやでした。デザインもださかったし、装飾品なんか使わねえよと思った……。

秋葉令
やっぱり無下にしたら相手に悪いと思ってしまうじゃないですか。そういう後ろめたさを利用して人間を支配するタイプの人がおります。

名前氏
いますよね。

高島鈴
いますねえ。そういうのとは距離置きたいところです。

慈雨
いますね、そして自分にもそんな部分がないか怖くなってきました。あめあげるとか程度にもよりますが。

高島鈴
微妙な補足なんですけど、さっきの卒業記念のネックレスというのは、学校から全員に一律で配られるやつで、だからこそキモかった、というのがあります。

慈雨
一律はキモイですね! せめてボールペンとか。

名前氏
平山夢明が本で、ある人が配ってたハイチュウ断ったら私のハイチュウが食べられないのか!?みたいな感じで激怒されたって言っててなんか思い出しました。場のコントロールとしての贈与。

私の高校は共学で、シャチハタついてるボールペンだった
全員一律ネックレスって、女子をなんだと思っているのか。

高島鈴
なんか何期卒業生とか書いてあるやつを「大人への第一歩」的に渡すのって、なんかキモいとしか言いようがないんですけど、学校と縁を切らないでね的なねっとりしたつながりを感じさせて嫌でした。卒業年度書いてあるから売れないし!

ハイチュウでキレられるの面白いな。なんか「俺の酒が飲めないのか」と同じ物を感じる。嫌ですね。

秋葉令
謎の錠剤送ってくる苦手な親戚情報ですが、その人は小遣いとか渡すときに「○○さんには秘密でね」みたいな謎のルールを埋め込んでくるんですよ。見えないところでも支配したいという欲求が透けてみえる。人間関係を操作すな。

慈雨
職場でお菓子を頂いたらなぜか女性が全員に配って回るのもだるいですね。お菓子は嬉しいけども。だから袋に大量に入ったおかきとかの方が持ってきてもらう側としてはありがたかったり。ご自由にって紙貼って置いておけるから。

名前氏
謎の錠剤って平沢進じゃないんだから。やり方が微妙に凝ってて怖いです。

高島鈴
なんかね、やっぱ嫌な贈りものってどっかで支配関係が見え隠れするんでしょうね。岩野卓司『贈与論』に書いてあったんですけど、お酒ってひとつの共同体で作るものではなくて、複数の共同体が協力して作る物なので、互いに贈り合うことが必要で、だからこそ手酌は厳禁で、お互い注ぎ合う「マナー」が作られたのだ、というのを読みました。配る役が女性に回されがちなのもそういう嫌な支配関係を感じる。

名前氏
そんな背景があったとは……。

高島鈴
今ちょうどオーディエンスのほうで女性の交換の話が出てたんですけど、まさに共同体間の女性の交換と酒の交換ってパラレルなものなんだと思います。

秋葉令
こわい話が多くなってきた。

高島鈴
ハートフルな贈り物の話に戻りましょうか(笑)。

名前氏
怖くない貰い物ってなんかあったかなぁ……。

慈雨
みんなもうアマゾンの欲しいものリストを見せてくれればこんなに悩まないのに!

高島鈴
大学の先生が断捨離してたときにいろいろ本をもらったのはうれしいもらい物でした。

秋葉令
そういう偶然な感じでもらいたいですね。後腐れないし、見返りを求められにくいし。

高島鈴
やっぱ本って誰が読んだかという歴史が刻まれているところがあるから、教授の前任校のハンコが押してあったり、一部が日焼けしてたりしたのが、なんかうれしかったですね。先生の歴史の一部をもらったみたいな気持ちになる。

古本で買った本によくわからん書き込みや蔵書印があるの、私はわりと嫌なんですけど(笑)、相手が知ってる人だとやっぱ面白いですしね。

名前氏
あ、高校の頃ハーゲンダッツを図書室で入力作業するお礼で司書さんからもらったことがありました。図書委員とか文芸部の一部は体育祭とか嫌な授業とか球技大会を全部そこでサボらせてもらった。ハーゲンダッツだけじゃなくて、空間とか居場所、いていいよというメッセージをもらった。

高島鈴
あ〜、そういうのいいですね。ここにいていいよって言われてるみたいな気持ちになる。

ちょうど同じこと書いてましたね(笑)。

秋葉令
アマゾンのほしいものリストとか、ネット経由の贈与は見返り義務感が発生しないので、気楽な感じがあると思います。対面でもらうと重い。

慈雨
めっちゃいいですね。そういう大人になりたい。

高島鈴
やっぱ対面性の問題なんだろうな、「そこにいてもいいよ」的ハーゲンダッツも、相手が目の前にいたからこそそういうちょっと重い意味が生じるわけで。その「重み」がいい方に働くことも悪い方に働くこともあるとは思うんですけど。

慈雨
関係性と対面性のバランス、難しいです。悪い方に働くとハラスメントになってしまう。

名前氏
そうですね、本読んでてもカウンター当番しててもすごく構ってくれたから当時少し警戒してうざがってました。「村上龍ってマッチョだから先生はあまり好きじゃないわ」とか話してくれて。とにかく図書室に避難していたからめちゃくちゃ心配されてたのだと思うが。

秋葉令
ただ個人的にはほしいものリスト公開するの怖くて、あれで住所知られる可能性がこわい。

リストに商品追加できるタイプのやつだと、出品者自体が商品を入れると追跡できるとか。なんかよくない裏技があるらしい。

慈雨
その人からもらったり奢られることで「よもつへぐい」になってしまう。

名前氏
その世界の人になってしまう。

高島鈴
「よもつへぐい」という例えは面白いですね。なんか相手との関係性が切りがたくなっちゃうというか、ある意味逃げられなくなってしまう。

秋葉令
呪術的な行為なのかもしれない。もの贈る。

慈雨
与えることで満足を得て病みつきになるのは「貢ぐ」になってしまうんでしょうか。よく「推しに貢ぐ」とか言いますけども。「贈る」からは程遠いのだろうか。

高島鈴
「貢ぐ」はなんか主従関係に発展しているような感じがしますね。渡す側が従者で、もらう側が王様、っていう関係は崩れない。

慈雨
お歳暮とかお中元にそれを感じます!

秋葉令
依存は上下どっちも気持ちいいんですよ。支配も主従も。だからこわい。

高島鈴
そこに身を委ねずに相手のことまっすぐ考えるとき、怯えが生じるのは、ある意味当たり前かもしれないですね。

名前氏
怯えも安全装置かもしれない。

慈雨
怯え、正常に思えてきました。

秋葉令
自分はもの贈られるより、贈るほうが怖いです。なんか何をやっても重い気がしてしまう。

高島鈴
重さな〜。なんか相手との関係性の計測作業になってきちゃうんですよね。どっからセーフか、どっから重いと思われるかとか。それは確かにダルいんだけど、でもそういうときに既存の儀礼システムに逃げるのもやだな、と思います。

秋葉令
以前、ある人に小説を送ったことがあるんですよ。本として売ってるやつとかではなく、自分の書いたやつを。

名前氏
私も絵ならあります。

高島鈴
自分が作ったもの贈るのは結構勇気いりますね。でも私もあるな……。

慈雨
私も短歌挟んじゃったりしてるのでなんだかそわそわしてきました。

秋葉令
わりと読書家の方だったので、大丈夫かなという予測はあったんですが。怖いのはここからで、その人はわりと好意的に読んでくれたんですが、なんだか作品ではなく自分が褒められているような気がしてくるんですよ。これって本当にやばいことだなと思って。

高島鈴
あ、でもこないだ親友に「今度ちょっと遠出するんだけどおみやげなにがいい?」って聞いたら「一句詠んできて」って言われたんですよ。これは手紙の話とも繋がってくるんですけど、「相手のためだけに作られた文章」って普通にヘヴィなプレゼントだなと。でもそれゆえにもらってうれしいときもある。

慈雨
旅って帰ってきてから記憶の中を行ったり来たりするものだから、短歌や俳句がその装置になっていいですよね。確かに重いですが。

高島鈴
自分の見た景色を相手に伝えるには、いい手段だと思います。

名前氏
アイドルのゆっきゅんが好きなんですけど、どのように愛されても負担に感じないから自分にはアイドルをやる才能があるって以前言ってて、手紙とかどんどん頂戴って普段から言ってて、すごい、と思いました。私手紙とかメール開けられないタイプなのです、怖いから。

高島鈴
うおお、それ、すごい才能ですね。

慈雨
すごい。やはり相手がどこまで受け取れる状態にあるか? というのを考えるのは贈り物をする上で気をつけたい点ですね。

高島鈴
なんか自分が祭り上げられるというか、ある意味神様にされちゃうことを受け入れられるってことですよね。愛の贈与、重いな〜〜! もちろん気持ちの贈与って愛以外も重いんですけど!

名前氏
そう思う、推しにそう言われて安心して愛せるかというと、人間じゃないものにしちゃうみたいで怖いです。現場に行く時びびるもの。

秋葉令
ところで手紙って送れますか? 手紙って重さの代表格じゃないですか。

高島鈴
手紙、私は好きですよ! でも以前も「C!C!C!」で書いた通り、送るところまでいくことは少ないです。

名前氏
わかります。手紙よくファンレターとか書くけど出せたやつは五分の一くらい。高校の頃甲本ヒロトにファンレター出して帰ってきた時は天地がひっくり返るかと思った。

高島鈴
わかる。書き上がるまでにもめちゃくちゃ書き損じますしね。

ファンレター返すのすげ〜な。バランス取れなくなりそう。

秋葉令
手紙って送ろうとしたい相手にはどうやってもめちゃくちゃ長文になってしまいます。

ギリ犯罪にならないだけでストーカーに限りなく近い行為のように思える。

高島鈴
やっぱファンとその対象って基本的に主従関係で不均衡だから、そこで「お返し」が個別にくるのはひっくり返りますね。

慈雨
手紙、パートナーからもらったら嬉しいし友達からもらっても嬉しいですね。送るのは怖い派です。一枚におさめてます。色紙の寄せ書きほどいらないものはないですが。圧がすごくてまだ前職から頂いた色紙見られていません。

高島鈴
手紙、自分の話ばかりするほかない場合が多いので、やっぱ塩梅が難しいですよね。

寄せ書きはマジでいらない!!

秋葉令
連判状ならともかく。

高島鈴
私ぜんっぜん後輩に慕われてなかったので、部活辞めるときの寄せ書きの内容も驚くほど薄かったんですけど、それ以上に自分がこの子たちに「自分へのメッセージ」を書かせている状況が怖かった。

名前氏
あー! すごくすごくわかります。

高島鈴
「いいよ無理しなくて!!」ってなりますよね。

慈雨
恐ろしいですよね。支配! 敬え! ありがたがれ! みたいな。真ん中に自分の写真なんか貼られた日にはもう。

秋葉令
自分の意図とは無縁に役割によって関係性が発生している。

名前氏
無駄に運動部の部長だったから……。

でも私の私物とか勝手に捨ててて完全に後輩に舐められてたのに儀式はやるのなぁと思ってよくわからない原理で動いてる子達だとも思いました。

高島鈴
毎年決まってる贈り物を突然やめるってやっぱ難しいですもんね。

慈雨
それはやはり贈与する行為(寄せ書きを贈る)に満足するということなのでしょうか。これやって送り出したもんね。みたいな。

高島鈴
やっぱ比較対象が生じてしまうせいだと思いますよ。先輩間で贈り物に差をつけて、誰かを軽んじていると思われたら困るという……。

慈雨
それはありますね……。

高島鈴
定期的・一律の贈り物は「比較」が生じるから面倒が多いというのは確実にあると思います。

秋葉令
基本、人間が儀式をやるのはカオスな現実に秩序を与えたいんでしょうね。人間が集まって離れていくのは偶然のことである、というのを認めたくない人が多いのだと思う。儀式によって必然性を装う。演じられた運命。

慈雨
いかにいらないものを予算内で持ち寄ってクリスマスプレゼント交換したいです。贈与から余計な意味を排除した結果がこれ……。

高島鈴
「いらないプレゼント」に逆に価値が生じるの、みうらじゅんの「いやげもの」思い出します。

名前氏
ナンシー関がファンの人に道でロボットの形の時計もらった話とか妙に好きです。

秋葉令
要りすぎるとこわい。

高島鈴
「いやげもの」とはもらってもうれしくない「いやなおみやげもの」の略なんですけど、わざわざ各地のお土産物やさんに行って、一番売れてないものを聞いたり、もうほんとに見るからにいらんものを買ってくるという。

名前氏
瓢箪に顔書いてあるやつとか、ペナントとか。

慈雨
剣に竜が巻きついたキーホルダーは今逆に欲しいです。

高島鈴
そういえばタモリ倶楽部で「やくみつるが能町みね子に生前分与する回」があったんですけど、めちゃくちゃ面白かったです。

やくみつるが相撲に関わるコレクションをいろいろ持ってきて、能町みね子にいるかどうか聞くんですけど、唯一能町みね子が「いらないです」と言ったのが、「やくみつるの家に高見盛が来て電球を替えてくれたときの電球」なんですよ。

秋葉令
すごい。

名前氏
そんなプレミアがついた電球……。

高島鈴
ほんとにやくみつる以外にとっては全く価値がないものなんですけど、やくみつるはそれを逸品として能町みね子に見せるという。でも能町みね子側も、「力士が握りつぶした缶ジュースの缶」とかはもらうんですよね。

慈雨
ネックレスより全然欲しいです。

名前氏
基準がわからなくて楽しい!

高島鈴
その基準は何!? と思ってめちゃくちゃ面白かったです。物の価値基準ってほんとに人によって違うんだなと。当たり前ですけど(笑)。

秋葉令
根本の話として、モノに対する欲求って謎だなと思ってます。コンテンツにしか面白さを感じない。本とかDVD・ブルーレイとかはわかっても、フィギュアとかはよくわからないんですよ。モノのよさってなんなんですかね。

名前氏
穂村弘はサイン会で5個入りのあんぱんもらったと言ってたな。

高島鈴
あんぱんは困るな。大胆だ……。

慈雨
フィギュアはいいですよ。キャラと一緒に暮らしている感じがします! 高いですけど!

高島鈴
それもやっぱ「思い入れ」の問題なんでしょうね。

名前氏

ゴミみたいなものが好き。

高島鈴
なんともいえない顔ですね。

秋葉令
ああ、そうそう。こういうものが全然わからないです。人間味のない人間だと思われたくないのでふだん言わないんですけど。

名前氏
なんか、この世ってまだこんな適当なものを売ってくれる可能性あるんだ、と思って。

慈雨
フライングタイガーとかも可愛いゴミがたくさん置いてある。今日のためにショッピングモールへ行って贈り物関係を偵察してきました。

高島鈴
フライングタイガーわけわかんないもの買いがちですよね(笑)。都心にしかないからあんまり行かないですけど。でもあれも、カラフルで明るくてかわいい場所にあるからなんかかわいい気がしちゃうんだけど、家に持って帰ると普通にくすんで見えたりするので、なんかマジックですよね。場所で意味が変わっちゃう。

慈雨
そう、みんな本当にこれ欲しいんか?! って思いますけどフランフランとかもクッション山ほど置いてあって改めて「みんなこれ欲しいんか?!」っていう。

高島鈴
ディズニーランド的な魔法ですね(笑)。

秋葉令
雑貨などを買ったことがいちどもないかもしれない。機能のあるモノしか買えない。なんか、怖くて……。

名前氏
すごく役に立つか、可愛いゴミみたいなものしか人にあげられないしもらっても怖いです。

機能がないものの怖さってどういったものですか?

秋葉令
部屋にただ置いてあるものってあるじゃないですか。ちょっとした布とか。壷とか、置物みたいなやつ。意図がわからないのに意味ありげなのが怖い。

高島鈴
ちょっと違うかもしれないですけど、花束とかちょっとした置物とかって、私は本当に嫌いなんですが、なぜか贈り物の定番としてありますよね……。あと花束という贈り物、ある程度ジェンダー化されてて、それも嫌です。

秋葉令
花も怖いです。飾ったところでなにも起こらないじゃないですか。強制的な関係性の意味付けしか感じない。好きな人にもらえばまだいいかもしれないけれど。

慈雨
あ〜花束はパートナー以外からはちょっと嫌ですね。スワッグとかハンドメイド市場ですごく流行ってますけど人に贈るのはちょっと。

名前氏
女には花を贈っておけば喜ぶみたいなのは嫌ですね。花は好きだけど自分で買う。

高島鈴
いや〜〜〜〜好きな人にもらっても花は嫌ですね。あまり植物に触りたくない。あと匂いが嫌いです。

秋葉令
私も嫌は嫌です。

高島鈴
この「嫌なもんは嫌」をどこまでできるか、どこまでやっていいのか、というのが難しいんですね……。

秋葉令
花ってかなり象徴的なプレゼントという感じがします。なんか純粋に呪術っぽい。

高島鈴
まあ形式ですよね。

名前氏
後最近は高級な猫の餌10キロサプライズで家まで宅配というのが困ったかな。うち猫1匹なのでしけるよと思ったのと、サプライズって嫌じゃないですか。

高島鈴
それは名前氏さんに対する相手の想像力がなかったというのと、ちょっと押し付けがましい感じがしますね。

慈雨
サプライズは普通に怖いですね。一時期フラッシュモブとかあったな。

秋葉令
プレゼントの怖さってサプライズ性がありますよね。

秋葉令
めちゃくちゃ好きな人でもフラッシュモブで告白してきたら絶対に関係を断ちます。

こわい話なんですけど、知ってる範囲にいるパワハラ系の人が、やたらと人の記念日を覚えているんですよね。誕生日とか。それでこまめにプレゼントを贈る。それがすごく印象に残っています。

名前氏
そういえば、社会運動だの学校だの何かでたまたま一緒で関係ができちゃった人との方が贈ったり贈られたりでこじれがちで、なんとなく仲良くなった人とは怯えながらささやかなものをあげたりもらったりすることで割と健やかな関係が保たれている気がします。

慈雨
贈り物をするというのはもはや祈りであり呪いですね。怯えつつ目の前にいない相手のことを考えて物を捧げるという行為が。

高島鈴
建前的な贈り物をガッツリやる人って怖い人が確かに多いかもしれない(偏見)。やっぱ誕生日のような「ポイント」を覚えてもらえてると、人って嬉しくなっちゃうし、嬉しくなっちゃってる人ってコントロールしやすいでしょうからね。そして今回もまた祈りの話になりつつありますね。何を考えているか分からない人のためのものを自分で想像して贈って、相手が気に入ってくれればいいなあとちょっと期待する、という。

秋葉令
相手に完全に見返りを求めない、応答責任のまったくない関係って倫理的には理想かもしれませんが、そういう態度で生きていると人間関係がすぐゼロになります。

慈雨
良い方に働くように傲慢にならないような贈り方をしたいし、リボンがかけられていなくともそれに気付きたい。と、角田光代『愛してるなんていうわけないだろ』より。

高島鈴
「リボンがかけられていなくともそれに気付きたい」、すごくいい言葉ですね!

名前氏
贈与にビビることは悪いことじゃないなと今日は思いました。

高島鈴
なんかいい感じにまとまってきた感じがします。贈与にビビるのも悪くないし、贈与にうまく応じられなくてもそれはそれで悪いことではないと思うんです。

秋葉令
ビリー・ワイルダー『アパートの鍵貸します』で、話の大筋は忘れましたが、悪役のおっさんがプレゼントを送るべき場面で、金を直で渡して愛想を尽かされるという場面があって、

(いいじゃん、後腐れなくて)と思った記憶があります。そのひねた感じでずっと生きてしまっている。

高島鈴
そういう「うまくやる」の呪縛から出た先で、シンプルに相手を思いやれるようになりたいな〜と思います。まあ金がいいか悪いかというのも文化圏の違いですよね。

慈雨
思いやりを目に見える形にすることに怯えつつ、やっていこうと思えました。失敗してもまた生きていれば機会はあるので。

名前氏
自分が相手の欲しいものと厳密には違ってるものあげちゃったとしても、思いやられてるかどうかは伝わりますもんね。思いやり持って生きたいものです。

高島鈴
贈与、文化の磁場からなかなか逃げられないものですからね。怯えるの、大事ですね。

秋葉令
適度にビビりつつ生きましょう。

高島鈴
いい締めだ!

#06 End