MONTHLYTOPICS「なるべく低く良い声で話す」

 初対面であろうとなかろうと人と話すのは大体苦手だ。元気じゃないと出来ないことだ。私は大体元気じゃないので「貴方のせいで元気がないわけではない。いや、むしろ今は元気!元気だよ〜!?」という事をそれとなく捏造しようといつも少しだけ頑張ってしまう。

 その一つみたいなものが「なるべく低く良い声で話す」ことだ。良い声にも色々あるが、なるべく低くはっきりと喋りたいといつも思っている。本当にそのように出来ているかは別として。

 最近はネット上で顔を出さずに喋る事が増えた。私にとっては嬉しい事だ。中肉中背やや童顔気味の顔の女体持ちのせいか関係ないのか、元職場でもなんでも「なめられる」事が非常に多かった。なめられない為にはドスの効いた声で「は!?」と素早く威嚇するのが一番だ。なめられ経験が多いので初対面の場合は自己防衛が自然に働くのか「は!?」とまではそうそう言わないものの、なるべく低くはっきりと良い声で話そうと思ってしまう。「これがいつもの私です。貴方に影響されて今こうなっているわけではないです。自信たっぷりです。超元気です」と半ば嘘を吐いている声の時もあるだろう。自分の声がどう聞こえるかをちゃんと把握出来てるとは思えないので、本当にそういう声になってるかは怪しいが。

 あらゆる演説でもそうだが、内容よりも喋り方や声に注目してしまう人は多い。私もその一人かもしれない。まばたきの多さが気になる時もある。自分も元々やや吃音気味だったり相手の言葉をおうむ返ししてしまう癖等があった為、今の状態に整えるまでに自己流だが発声の練習をした時期がある。その昔取った杵柄で、それを初対面時の発声に利用している。近頃は気の合う人らとのお喋りが多いので露骨に作った発声してる事は無いと思うが、初対面の時はやはり少し警戒して低く良い声で話そうとしているだろう。おおよその人は、話している人物の服がオシャレだったらそこに目がいくように、良い声だったらそこに魅力を感じる。それは私自身という内容を隠すカモフラージュとして機能する。自分から情報開示するのは大好きだが、相手から深く踏み込まれたくはないというクソ我儘な私にとって、それは便利かもしれない。と、思ってそういう事をしている。成功しているかどうかは当の他人に聞かないと分からない。

 高い声ではなく低い声で話すのは、私がノンバイナリである事と多分関係している。また、自分自身が大体低い声に魅力を感じるのでそれに意識的に寄せているのだと思う。「多分」とか「思う」とか自分でもよく分かってない感じが出てるが、その通りで自分でもよく分かっていない。とにかく私はナルシストなので、少しでも自分を「理想的な魅力」に合わせたいだけだ。その時々で私の中の「理想的な魅力」は変化するので、私の声も変化している、気がする。これもよく分かっていない。長年私の声を聴き続けている観測者がいればいいのだが、いないので私の思い込みの可能性もある。分かんない。

 まぁ、とにかく低く良い声で話しておいて損は無いだろうと信じて続けている。この文章を書きながら「本当にそれ出来てるのか!?」と少し不安になってきたので、今度学生時代からの友達にでも聞いてみようかと思う。取り敢えず、初対面時はなるべく低く良い声で話して相手のハートをゲットしたい。ナンパでもポケモンでもないんだけどさ。